<介護操体とは>

 

                                         坂本洋子監修

 

 人の生理的な体の動かし方、操体法でいう身体運動の法則、古武道の体の使い方を介護の身体介助に活かそうとするものです。
 お互いに無駄な力がいらないだけでなく、リハビリ、健康増進になる技術です。

 

 

<成り立ち>

 介護保険制度(2000年4月)ができる10年ほど前、奈良県北葛城郡上牧町で家族を介護する人達がグループで勉強会を始めました。特に力の要る身体介助について、理学療法士である川田光博氏の指導を受ました。以後この勉強会は誰でも参加できる介護教室(1回/月)として継続し、介護保険施行後は介護職の参加が増えました。


 介助される人が楽に感じる動きを、介助する人が負担を感じないで介助する方法を学び、それを介護現場で試み、また勉強会へ持ち帰って再検討し・・・と、技術を積み上げてきました。
 同時期、グループのリーダーの坂本氏は「奈良操体の会」の公開講座にも参加していましたが、『操体』をする人のなかには武道に通じる人も多く、武道の体の使い方と川田氏の介助技術に共通点があることに気が付きます。   

 

 その共通点は操体の理論に説かれている体の使い方であり、介助技術は「自分が相手を動かす」のではなく「相手と一緒に自分が動く」という発想に至ります。


 その動き方を「介護操体」と名付けて数年、上牧町で勉強会が始まって20年を経て、様々な場面に対応できる介助技術ができあがってきました。

 

 

 

<特徴>

介護される人にとって

1)ストレスが少ない
 ・捕まれた、引っぱられた、持ち上げられた、といった苦痛が無い。

  (身体的ストレス)
 ・介助者に対して自分のために重労働をさせている、という負い目がすく   

  ない。(精神的ストレス)
 ・元気になった、自分でできたという気分になります。その結果気持ちが  

  前向きになりリハビリへの意欲もわきます。
2)リハビリになる
 ・全介助で寝たきりの期間が長くなっても筋肉の拘縮がおこりにくく、体

  のしなやかさを保てます。(拘縮・硬直の予防)
 ・生理学的な動きを繰り返し介助されることで、筋肉を動かす神経回路が

  維持あるいは快復されて、体力が快復したときには自分で動けるように

  なります。
3)特殊な道具や設備がいらない
 ・エアマット、ギャッヂベッドなどを使用しなくても介護できるケースが

  増え、余計な経費がかかりません。
 ・機械浴がなくても、20分程度座っていられる人なら、どこの家庭にも

  あるようなものを利用して自宅のお風呂で入浴介助できます。
 ・住み慣れた家で元気に過ごす期間が長くなります。


介護する人にとって

1)無駄な力が要らず、楽に介助できる
 ・筋力のない人でも楽に介助出来ます。
  けれども、自転車乗りと同じで、コツをつかむまでは練習が必要です。
 ・介護技術が無いゆえの「寝かせきり」から生じる『寝たきり』を防ぐ事 

  ができます。
2)心に余裕ができる
 ・楽に能率良く介護できるので、体力的、時間的に余裕ができます。する 

  と心にも余裕がでてきます。介護する人に余裕ができると介護される人

  も落ち着きます。
3)健康維持・増進になる
 ・介護操体の、体の使い方は、体のゆがみを整える効果があります。腰痛  

  五十肩などの予防になるだけでなく、すでに症状のある人は症状が軽減 

  してきます。
 ・無理なく足腰が鍛えられるので、知らぬ間に体力がつきます。
 ・全身の筋肉をバランスよく連動させるので、体が引き締まってきます。
4)応用が利く
 ・介護操体は単なるハウツー物の技術ではありません。体の使い方の基本

  は、家事や日常の所作・ダンス・スポーツ・他の力仕事をするときにも

  役立ちます。
 ・介護現場の個々のケースで、途方に暮れないでどうすればよいか考えら

  れるようになります。